┃ 勤める設計事務所を退所した理由は、私が新しい視座で設計を見直す必要を感じたからです。13年間、事務所の中でただひたすら設計に埋没してきました。職人のように・・・。設計環境や担当物件には恵まれましたが、このまま設計行為を続けてゆくと、組織に埋没し「食べるために設計してゆく」危機感を抱くようになりました。建築の全体像を捉え、自分が生き、感じ、考え、発見したことを設計のなかで純粋に問うてゆく試み。建築を目指す意思が一度も試されず曖昧になってしまうのではないかという危惧「設計するために食べてゆく」という私自身の狂気を一層厳しいであろう環境の中で実現してゆきたい、その考えが頭から離れなかったのです。
私には走り続けてきた間失われていた、思索する内的な時間が再び戻ってきました。実務の中で隙間なく押し寄せる検討内容に頭を取られていたときとは違って私自身が設計の中でやったこと、やらなかったことも俄かに見えてきました。この内なる時間の中での思索、思念、構築する言葉は、ものの良し悪しといった印象・感性・培ってきた経験といったものと連理の枝となりモノづくりを深化させる上で欠かせないものと感じております。自らのイメージを言葉にしてゆく、言葉からイメージを膨らませる。新たな考え方を明らかにする。これから次に駆け抜ける10年の糧となることを。
あっという間に桜の咲き乱れる季節が過ぎてゆきました。いくつか花見にも誘われていたのですが、参加できずに終わりです。今年こそは、早めに咲く川越中院の枝垂桜をゆっくり堪能しようとも決めていたのですが、それもかなわず家から望む桜の姿で思いをはせています。新たな設計活動に向けていろいろと準備に追われている今日この頃です。窓から眺められる石神井川の新緑は、暖かい春の雨により育まれながら本格的に芽吹き、その姿を美しく変えてゆきます。少しずつ変わってゆく環境に合わせながら、樹々の営みは耐えることなく実り多き収穫のために繰り返されてゆくのです。
練馬区は暑い。都心の熱気が押し寄せてくるようです。自然のままに生きてゆこうと空調なしでがんばっていたのですが、暑さで朦朧となり思考停止。あまりの効率の悪さに耐えかねて近所の家電屋さんに駆け込みました。長年冷房の良く効いた環境で仕事をしていたため、体温調整機能が弱っているのも一因ですが、それだけではなさそうです。もはや機械なしでは生きられないくらい暑いのではないでしょうか。石神井川のほとりで緑も多いはずなのに窓を開け放しても吹くのは熱風のみ。パッシブな自然環境の取入れだけではとてもやってゆけないと実感しました。エアコンが取り付くまであと1週間は机の上がべとべとでも我慢です。
2004年9月20日。午前9時50分モコは静かに息を引き取った。終わりかけた夏の穏やかな日、大好きな公園に行った。ここ数年、白内障で失われた視力がよみがえったように気持ちよさそうにまわりの風景を眺めていた。多分暖かい陽射しと柔らかな風を肌で感じ取っていたのだと思う。そのあと眠るように安らかな最期だった。18歳と8ヶ月と9日。
3時間くらい降っては消えていった一期一会の雪。冷え切らない大気の中、水気を含んだ雪が春の息吹を待つ樹々の上をほんの数時間ほど留まっては消えていった。これがその証拠写真。そのいくつかは海に流れ、またいくつかは根元に留まりしばらくすると桜の花を咲かせる。
┃ 雪景
┃ 2005年3月4日
┃ good-bye apricot
2004年10月18日
photo by TOMOYUKI SUZUKI
┃ 暑い
2004年7月14日
┃ 花見もしないで
2004年4月4日
┃ その理由
2003年11月15日
┃ SLOW LIFE 内的時間への回帰
住宅設計 小泉設計一級建築士事務所 東京都 練馬区 設計事務所